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2012年10月09日

今があってこその過去・未来

 世間は6~8日の3連休だったが、私の場合は関係ない。思えば1980年3月にゴング編集部でバイトを始めた時から土日・祝日とは無縁の生活だ。今は週刊誌の締め切りから解放された生活になったが、それでも6日(土)=執筆&資料調べ、7日の日曜日は正午から全日本・後楽園ホール大会GAORA生中継の解説。その後、自宅に戻って原稿を1本仕上げてから全日本40周年記念パーティーへ。体育の日の昨日8日はノアの横浜文化体育館に行き、終了と同時に新日本の両国へ。どうにか休憩明けの真壁刀義&井上亘vs桜庭和志&柴田勝頼からの4試合を観ることが出来た。

 2日間の全日本&ノア&新日本の取材を通して改めて痛感したのは「今現在があるから過去があるし、未来がある」という、ごく当たり前のこと。全日本の10・7後楽園は40周年記念大会だったが、そのメインでGAORAの初代TVチャンピオンシップを争ったのはキャリア5年の真田聖也と3年にも満たない中之上靖文だった。ケニー・オメガの挑戦を退けた大和ヒロシも真田と同期のキャリア5年。全日本旗揚げの時には生まれてもいない若者だ。そして武藤・全日本になった時点でも、まだプロレスラーではなかったのだ。これが時の流れである。その一方では武藤敬司とスコット・ノートンがタッグを結成して、放送席には蝶野正洋が登場し、90年代後半に大ブームを巻き起こしたnWoが再現された。その相手は全日本黎明期に入門したキャリア38年半の渕正信、94年6月にジャイアント馬場にスカウトされてハワイから来日した太陽ケアの馬場・全日本コンビ。ほぼ旗揚げ期から現在までが同居するのがプロレスの奥深さだ。

 パーティーでは武藤が全日本会長として挨拶し、その武藤を新日本に入れた現・新日本相談役の坂口征二氏が乾杯の音頭、そして現在の全日本の象徴・三冠王者として中締めの挨拶をしたのが船木誠勝。古い全日本しか知らない人にしてみれば「一体、どうなってんだ!?」と声を上げたくなるような波乱万丈の歴史が全日本にあったのだ。

 そんな話をしたら武藤は苦笑していたが「正直、俺の膝も動かなくなってきたよ。でも、俺が動けなくなったから終わりじゃ意味がねぇんだよ。俺が動けなくなっても…俺の肉体が滅びても続いていく会社じゃなきゃダメなんだよ。今までのプロレス界は、実際には馬場さん一代とか、猪木さん一代みたいな感じだったけど、この今の全日本は武藤商店じゃなくて、ちゃんと人材を育成して未来につなげる。それが俺の仕事だと思うし、レスラーとしても、もちろん俺にしか出来ないものっていうのがあるからさ、その部分でやっていこうと思ってるよ」と熱い言葉。かつて武藤は「先輩方が道標を作ってくれなかったから、今の時代の人間が苦労している。だから俺は、俺自身が道標になれるぐらい頑張ろうかなって気持ちはあるよ」と言っていた。武藤は今現在の自分の置かれている立場で、ちゃんと過去・現在・未来をつなごうとしているのである。

 そして昨日のノア横浜と新日本・両国。ノアのGHC王者・森嶋猛と新日本のIWGP王者・棚橋弘至は同世代の王者であり、それに挑んだ秋山準と鈴木みのるも同世代。タイトルマッチ実現までの背景は違うが、大きなテーマは共通しているように感じた。それは過去が現在に挑戦するということではなく、秋山も、鈴木も、これまでの実績にふんぞり返ることなく今現在のプロレスを闘い、今現在の若いチャンピオンと対峙したということだ。

 秋山も鈴木もベルト奪取成らなかった。それでも2人に気落ちはなかった。それは過去に生きているのではなく、今を生きているからだ。失敗したなら、またチャレンジすればいいのである。秋山は言った。「あいつの下で3カウント聞いたってことは俺の負けだ。でも俺のチャレンジは絶対に終わらないからな!」と。

「未来はな、未来の人間にしか創れねぇんだ。過去はな、過去に生きた人間にしか創れねぇんだよ。俺たちには無理なんだよ…。だけどな、今はな、現代はな、こうやって命と体を張っている俺たちが創るんだよ。俺たちにしか創れねぇんだよ」。この鈴木の試合後の言葉は心にズシンと響いた。

 この言葉を吐いた鈴木、再チャレンジを口にした秋山のプライドは過去にあるのではなく、今現在のプロレスの第一線のリングに立っているということにあるのだ。それが戦前の鈴木の“あの時代に関わった奴ら”への怒りになったのだと思う。今現在のプロレスがなければ過去を語ることができないし、未来を夢見ることもできない。だから今現在が大切なのだ。

 私自身の仕事についても思う。いつしかキャリアを積んだことで、過去のことについての原稿のオファーが多い。それは、その時代を実際に知っている私にしか出来ない仕事だし、私の財産でもある。でも、私は過去に生きているわけではない。過去だけに生きるなら今のプロレスを観る必要はない。今現在のプロレス界で生きているから時間が許す限りは現場で試合を観て、現場のリアルな空気を吸い、お客さんの反応を感じ、それを自分の新しい財産として蓄え、いつ何時でもそれを出せる準備をしている。それこそ“あの時代”を知っている人間だからこそ語ることが出来る今現在もあるだろう。それが私の仕事である。この2日間、全日本&ノア&新日本を取材してよかった。特に「無理かなあ」と半分諦めかけていたノア→新日本のハシゴは強引にやってよかったとつくづく思っている。

投稿者 maikai : 2012年10月09日 12:11

コメント

何気にキャリア10年未満どころか5年辺りの選手が中心になってるのは明るいですね。

投稿者 Anonymous : 2012年10月21日 13:31

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