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2011年06月12日

平井選手の事件について

 5月30日からこのダイアリーを自粛してきた。これまでの間、様々な大会を取材してきたが、最初に書くべきことは平井選手の件だと決めていた。だが、憶測で書くのは嫌だったから更新出来ないままでいた。本日の後楽園ホールで全日本プロレスの新社長に就任した内田雅之氏から観客に対してお詫びと所信表明があったので、これを機に書こうと思う。

 まず個人的な感情から書かせていただく。平井選手とは90年夏にSWSの第1回練習生公募オーディションに合格してからのお付き合いだし、TARUにしても96年夏にWARに参戦してからの付き合いだけにやはり心中は複雑だ。素顔のTARUについては礼儀正しく、腰が低い人物という思いがあるし、この世界ではどんな理由があるにせよ、後輩が先輩に暴行を働くというのは有り得ないことだけに、今もなお「なぜ?」という気持ち、ぶつけようのない怒りと悲しみがある。

 今、表面に出ているのはTARUがVMの控室からジョー・ドーリングとレネ・デュプリの2外国人選手を控室の外に出し、KONO、稔、MAZADAの3人を残した中で“個人的、ビジネス的、プライベートの部分のいざこざ”から平井選手に暴行したこと。他の3選手は手を出さなかったこと。異変に気付いた和田京平レフェリーが止めに入ったこと。隣の控室で大声を聞いた内田氏がVMの控室に行ったところ、TARUが出てきて「お騒がせしました」と謝罪したことで暴行の事実を把握していなかったこと。だが、真相究明は困難を極めると思う。何より被害者の平井選手の意識が回復していないからだ。現時点では加害者側、その場を目撃したとされる人たちの断片的な記憶しか材料がないからだ。それを事実として公表したとして、平井選手のご家族にしてみたら納得がいかない部分が出てくるだろうし、平井選手の意識が回復して違う証言をしたら話が全然違ってきてしまう。真相究明は時間がかかる作業だということを認識していなければならない。

 当日、GAORAの中継があり、私と鍵野威史アナウンサーも現地に飛んだが、あいにくの台風で飛行機が遅れ、会場入りは収録の打合せギリギリ。よって試合前の雰囲気は把握していない。また、早い時間から会場入りしていた番組スタッフも、まったく気付かなかったという。気付かなかったのは選手も同じようで、事件が明るみになった後、私の方が「何があったんですか?」と聞かれたほどだった。

 さて、全日本の対応は、本人の告白を受ける形でTARUを無期限出場停止、その後、VMの解散、控室にいたとされるKONO、稔、MAZADAの3選手も無期限出場停止処分にした。TARUは当然としても、VM解散と3選手の処分は厳しいものだと私は受け止めている。VMの解散は、全日本マットの構図を根本から崩すものだし、3選手は止めに入ったかもしれないのにもかかわらず処分されたのである。真相がハッキリしない以上、灰色も処分する。これは武藤にとっても苦渋の決断だったと思う。

 そして武藤の社長辞任。武藤がなかなか会見しないことに非難が集中したし、ようやく会見をしたと思ったら、その場での社長辞任発言に「責任から逃げるのか!」という声も上がった。しかし、どんな会見をやったとしても、非難を浴びたのではないか。社長の時点での武藤の責任は、真相究明はもちろんのこと、会社の社長としてレスラー、社員、その家族の生活を守ること。当然だが、平井選手の事件が賠償問題に発展した時に「ウチの会社は何も出来ません」ではお話にならないのである。各方面への謝罪や、後任人事等の調整に奔走していたことで会見が遅れたことは想像に難くない。辞任を「責任逃れ」と批判するムキもあるが、社長を降りたからといって責任から逃れられるはずがない。これは社長であり、管理責任者でもあった武藤として、その時点で出来得る責任の取り方、けじめだったと解釈している。2002年10月に全日本の社長に就任し、これまでの9年間、もがきながら馬場・全日本を武藤・全日本に変えてきた。来年は全日本創立40年、武藤にとっては社長就任10年の節目の年だった。それを目前にしての辞任は正直、無念だったはず。そこには「グレーゾーンの3選手を自らの手で処分した以上は、自分自身も処分するべき」という気持ちがあったことだろう。

 こうした私の文章に武藤擁護に回っていると思う人もいるに違いない。でも私は、現時点で公になっている事実を前にこう感じているのだ。

 一番悲しいのは「全日本は潰れろ」とかいう声が出ることだ。確かに今回の事件は平井選手とそのご家族はもちろん、プロレス界全体に多大な迷惑をかけた。その責任は負わなければならないが、リングに上がっている選手は、様々な想いを抱えながら、その日の試合を精一杯戦っている。そんな彼らをなぜ応援してあげられないのか? 責任を負い、償うのは当然としても、全日本プロレスが無くなるべきと考えるプロレスファンがいたとしたら実に悲しい。もしそうなったらプロレス業界全体が、それこそ計り知れないダメージを受けるのである。

 いろいろと書き連ねたが…私の祈りは、平井選手が1日も早く回復すること、そして全日本プロレスが再生することです。

投稿者 maikai : 2011年06月12日 20:46

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