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2010年07月31日

竹田誠志にデスマッチの新たな匂いが

 昨日は5・4横浜文体以来の大日本プロレス。伊東竜二にSTYLE-Eの竹田誠志が挑戦したBJW認定デスマッチ・ヘビー級選手権…ガラス&蛍光灯+αデスマッチだ。私はデスマッチ・アイテムの中でガラスと画鋲が苦手。普通、蛍光灯で殴られることはないが、子供の頃にガラスで手を切ったり、画鋲を素足で踏んづけたりした経験があるからだろう。

 それはさておき竹田である。私は竹田が大日本に参戦し、デスマッチ・ファイターになった当初から注目していた。総合格闘技からプロレスへの進出はあっても、総合からデスマッチへの進出は考えられない。ところが竹田は、あの田村潔司が主宰するU-FILE CAMPに入門して総合格闘技イベントで実績も残しながら「実は昔からデスマッチに憧れていた」という変わり種なのだ。試合もスープレックス系やサブミッション、鋭いスピアーなど、格闘技的な匂いがあるからデスマッチをやっても新鮮。佇まいもいわゆるプロレスラーとちょっと違うところが私の琴線に触れた。

 近年の伊東、佐々木貴、宮本裕向などのデスマッチは、どんなに血を流しても試合後に爽やかな気分にさせてくれるスポーツライクなもの。その一方で葛西純は「爽やかなデスマッチなんてねぇ。デスマッチはもっとドロドロした殺し合いなんだ」と主張する。竹田のデスマッチはどちらかというと葛西寄り。だが、ドロドロしているというよりは、やはり格闘家ならではの匂いがあるのか、勝負にこだわったデスマッチという印象だ。

 昨日のデスマッチにしても、竹田はSTYLE-E無差別級のベルトを締めて登場し、STYLE-E代表として勝負にこだわりを見せ、そんな竹田に対して伊東が非情に徹して潰しにかかったから「凄い!」の一言だった。伊東は竹田が+αアイテムとして持ち込んだ小型のカミソリ・ボードを奪って背中に力いっぱい降り降ろし、さらにガラスで突っ込んで血だらけになった竹田の背中にイスを叩きつけ、蛍光灯とガラスの破片でザクザクになっているキャンバスにスラムで叩きつけるなど、序盤からラッシュした。

 竹田にとって不運だったのは蛍光灯をヘッドバットで割った際に左瞼に破片が刺さって大流血してしまったこと。恐らく、ほとんど視界を遮られた状態で試合をしていたのではないかと思う。それでも竹田の心が折れることはなかった。伊東が持ち込んだ画鋲の上にジャーマン、あるいはイスにガラスをセットしてその上にジャーマンと持ち味を発揮して反撃を試み、蛍光灯すだれを体に巻きつけられてムーンサルト・プロレスを投下されても、画鋲とガラスの破片をかき集めた状態のキャンバスにジャーマン、ドラゴン・スープレックスを連発されても屈さなかったのである。

 最後はドラゴン・スプラッシュwith蛍光灯束に力尽きたものの、後楽園ホールは竹田コールに包まれた。

 王者・伊東は竹田について「強いですね。それに試合の組み立てとかバランスがいい。自分も見習わなきゃいけない部分がありますね」と称賛。「こういう奴がいる限りデスマッチは潰れませんよ」とも言った。

 最後、印象的だったのは竹田が伊東の握手を拒絶したこと。スポーツライクではない竹田流のデスマッチが極めて近い将来に確立されるはずだ。

投稿者 maikai : 13:12 | コメント (1)

2010年07月28日

ばかばかしさ、くだらなさ、お笑いの先には…

 さてさて、今日は24日&25日の取材のラストを飾ったDDTの両国大会。とは言っても、すでに多くの人たちがブログでアップしているので、そんなに書くことがなくなってしまった。

 ひとつ言えるのは、去年に続くビッグマッチながら、普段通りの、普段から積み上げてきた試合を提供したということ。こういう大会になると普段はDDTを観ない人、あるいは初めてプロレスを観る人もいるだろうが、そこで敢えて“いつものDDT”を提供するというのはチャレンジであり、実験だったと思う。

 そんな中でのMVPは中澤マイケルだ。オープニングの肛門爆破からエンディングまで…今大会のキモになっていたのはマイケルだった。ヤゴウ公国との最終戦争で、マイケルがファイヤーバード・スプラッシュで試合を締めた後、高木三四郎が泣いていたが、あれは「よくぞ、やってくれた!」という本物の涙。普段から面白おかしくマイケルをイジっているが、それもマイケルのプロレス頭を信じているからだと思うし、今回、裏主役に起用したのは冒険だっただろうが、マイケルは見事にそれに応えたのである。マイケルがもし肝心の試合でグダグダだったら、大会の意義そのものが揺らいでいただろう。

 プロレスラーの「最後までやり遂げる」という姿勢を見せてくれたのは丸藤だった。途中で右肩が上がらなくなるアクシデントに見舞われながらも極力、お客さんに気付かれないように毅然とファイト。ケニーの破天荒な技にもキッチリと受け身を取って戦い続けた丸藤には三沢光晴の遺伝子を感じずにはいられなかった。

 そしてメインのHARASHIMAも立派だった。2年続けての両国のメインという大役を任され、大日本の関本に奪われたKO-D無差別級王座を奪回するという勝負面もあったわけだが、その2つをまっとうしたのである。「目に汗が入っただけさーっ!」と叫んでいたが、感極まるものがあって当然。試合後、控室で取材を受けている時にも目から涙がこぼれて「今日はやたらと目から汗が…」と言っていたのが印象的だった。

 ばかばかしさ、くだらなさ、お笑い…そうしたものを突き詰めた時、そこに“本当の部分”と“感動”が生まれる。そんなDDT両国大会だった。

投稿者 maikai : 10:44 | コメント (3)

2010年07月27日

性根を据えた全日本プロレス

 今日は25日の全日本・後楽園大会について。会場入りしたところで河野に会った。見ると髪の毛をブルーに染めている。「どうしたの、それ?」と聞くと「今日は新世代軍の解散がかかった大事な試合じゃないですか。ブルーは新世代軍のテーマ・カラーですから。まあ、サムライ・ブルーってことで!」と笑顔。河野は7・4大阪で鈴木みのるの三冠王座に挑戦して完膚無きまでに叩きのめされてしまったが、あの一戦、そしてそこに至るまでの過程で芯が強くなったと思う。「変わらなきゃいけない!」という強烈な意識を持っていたからだ。初の三冠戦前夜は眠れないほどのプレッシャーがあったというが、それを乗り越えたこれからが正念場だ。

 さて、メインの新世代軍vs超党派軍の全面対決8人タッグは、諏訪魔がみのるを攻略すれば8・29両国で三冠挑戦決定、みのるが諏訪魔を潰せば新世代軍解散がかかった一戦だった。結果は新世代軍総掛りでみのるを押さえた形になった。最後にフォールしたのが諏訪魔ということで両国での三冠戦が決まったが、みのるが言う通りに両国から本当の闘いがスタートする。

 この全日本の世代闘争の難しいところは、普通なら時代を変えようと挑む反体制の新世代軍が支持されるはずが、超党派軍が支持されているところだ。スタートが、狙われるべき上の世代が「俺たちの首を取ってみろ!」と超党派軍を結成して新世代に噛みついたことによって、上の世代の方が反体制のイメージになってしまったこと。それに加えて、弁が立つみのるの発言がいちいち納得できるものだし、キャリアのある超党派軍は試合での自分たちの見せどころを知っているから、新世代軍はこれまで太刀打ちできなかったというのが正直なところだ。

 だが、ようやく流れが少しずつ変わってきた。不器用ながらも諏訪魔たちの「全日本プロレスを若い俺たちの力で変えたいんだ!」という心意気が伝わってきているように感じる。少なくとも後楽園に来る全日本ファンは理解しているはずだ。これを全国各地に広げていくのが課題。かつての天龍同盟、超世代軍のように、どんな会場でも、どんな試合でも「彼らはいいね!」というインパクトを残していくしかない。それは気が遠くなるような草の根運動だが、そうした地道な積み重ねなくして時代は変わらないのである。

 今の全日本は本当に諏訪魔らの若い力の可能性に賭けている。象徴である武藤不在(ムタとして8・29両国でKENSOと一騎打ちを行うが)の中、頑なに他団体と交わらずに独自路線を突き進んでいるのは「この苦しい状況でヨソの力を借りたら全日本プロレスの未来はない」という社長としての武藤の考えがあるからなのだ。武藤は腹を括っているのである。もちろん、状況をリカしている諏訪魔も腹を括っている。性根を据えた全日本に注目してほしい。

投稿者 maikai : 12:56 | コメント (1)

2010年07月26日

SMASHの深化

 実は自宅兼事務所(実際には単なる仕事部屋)の引っ越しと諸々の原稿の締め切りが重なって7月10日のノア有明コロシアムから2週間も取材現場に行くことが出来なかった。それだけに24日(土)のSMASH昼夜興行、昨日25日(日)の全日本・後楽園&DDT両国と、2日間で4大会に行けたのは大いなるストレス発散。ということで順を追って感じたことを書いてみたい。今日はまずSMASH昼夜興行だ。

 SMASHはTAJIRIのご指名を受けてサムライTVでの解説をやらせてもらっているが、いつも困ってしまうのは様々な要素、考えさせられることがあって、一言で表現出来ないことだ。今回の昼夜興行で7回目を数えたが、1回目と2回目は様々なキャラクターを紹介するサンプラー的な興行だったと思うし、3回目は1&2回を踏まえて未知のフィンランドFCF勢が日本に初上陸して本編がスタート、4回目は朱里vs華名の女子プロをメインにした実験的な大会だったように思う。

 そして今回の昼夜興行は「私のSMASHに対する考え方、イメージは違っていたのかな?」と考えさせられるものだった。

 SMASHは、あのTAJIRIがプロデュースする興行だけに、お客さんは勝負の行方よりも、その独特の世界観を楽しみに来ているのだと思っていた。ところが、これは考えてみれば当たり前の話なのだが、お客さんは勝ち負けにこだわりを持っているというのを実感させられた。元WWEのユージンやスカリーⅡホッティーのパフォーマンスを楽しみつつも、新日本の三上恭佑に対する児玉ユースケ、華名に対する朱里、昼の部スター・バック、夜の部ヴァレンタインに対する大原への声援は熱く、特に昼の部でスター・バックのパイルドライバーで首にダメージを負った大原が夜の部でヴァレンタインに勝利した時の沸き方は半端じゃなかった。夜の部のメインではTAJIRIがスター・バックにFCF王座を奪われたが、スター・バックが必殺パイルドライバーの態勢に入った時の「アーッ!」という悲鳴にも近い歓声が起こったのも印象的。それは昔、フリッツ・フォン・エリックがアイアンクロー、キラー・カール・コックスがブレーンバスターの態勢に入った時のどよめきを思い出させてくれた。「これを決められたら終わりだ!」という緊迫感である。

 そして注目したのはフィンランドで初めてプロレス団体を立ち上げたスター・バックだ。正直、どういう選手なのか実態は掴めなかった。一応、専門家的に分析すると、必殺のパイルドライバーに持ち込むために常に相手の首にダメージを負わせる技で理に適った試合の組み立てをする選手であることはわかった。しかし、それよりも大きいのは異常に大物感、オーラがあること。「何なんだかわからないけど、こいつは凄いんだな!」と思わせる空気を持っているのだ。

 選手それぞれにキャラクターがあり、観客は勝敗にこだわる。そして必殺技に説得力があり、“まだ見ぬ強豪”は実際に日本のリングに立ってもその神秘性を失わない。これらの要素はまさに古き良き時代のプロレスそのもの。TAJIRIは新しいことをやっているようでいて、SMASH旗揚げ前にサムライTVで対談した時に言っていたようにプロレスの原点回帰を目指しているのだということが旗揚げ4ヵ月して、ようやく理解できたような気がした。

 もうひとつ、今はハッピーエンドが常識になっているが、今回の興行はTAJIRIがベルトを奪われ、大原がTAJIRIに決別宣言するというバッドエンドだったことにも注目したい。だが、それは決してお客さんを嫌な気持ちにして帰させるというものではなかった。昼夜共に満員になったことで年内のJCBホール進出が決定した中で「人生はすべてがうまくいくわけじゃないけど、みんなで力を合わせて頑張ろう!」という空気が生まれたバッドエンドだったのである。

 何だが、ドンドン深化していくSMASH。これが新宿FACEという小さな空間からJCBホールに進出した時にどんな空間になるのか興味深い。まずはその前に8・30新宿FACEだ。

投稿者 maikai : 11:14 | コメント (3)

2010年07月03日

カズとTAKAが見せた重み

 昨日の全日本・後楽園は髪切りマッチあり、超党派軍vs新世代軍vsVMの全面対決6大シングルマッチ、そしてカズvsTAKAの世界ジュニア戦という出し惜しみないマッチメーク。そんな中でやはり最もインパクトがあったのはメインを締めたカズvsTAKAだった。

 共に92年にユニバーサル・レスリング連盟でデビュー。TAKAの方が3ヵ月先輩になる。Gスピリッツでユニバの代表だった新間寿恒氏にインタビューしているし(カズとTAKAの話は9月下旬発売の第17号に掲載予定)、2人の全日本マットにおける歩みを間近で観てきたから個人的に思い入れのある試合でもあった。

 思えばTAKAはカズから世界ジュニア王座を奪って12回防衛という渕に次ぐ記録を作った。そして4年前の06年6月25日の『ジュニア・ヘビー級リーグ戦』開幕戦で2人は激突。大会直前に右膝を手術していたTAKAは思うようなファイトが出来ずにカズに敗れ、TAKAの体調を知っていたカズは「この大会に優勝して、必ず世界ジュニア王座も獲る(当時の王者は近藤)。そうしたら、メインでベルトを賭けて戦おう!」とTAKAにエールを送った。世界ジュニア戦でのメインは去年の2・6後楽園で王者・丸藤vsカズという形で実現したが、カズがTAKAと防衛記録で並んだ段階での今回の対決は、4年前の約束を果たす最高のシチュエーションだったと言っていい。

 だが、今回もTAKAは右膝を手術したばかり。あの4年前の手術から、ずっと怪我と付き合ってきたのである。タイトルマッチ調印式の時点でTAKAは松葉杖という状態だったが、これはTAKAにとって何が何でもやらなければいけない試合だったのだ。

 髪切りマッチ、ヘビー級による6大シングルの後というプレッシャーがかかる中で、カズとTAKAはこの18年積み上げたすべてをぶつけ合った。2人の試合は今のジュニアの試合と全然違った。難解な技も、派手な飛び技も、ロープワークを使った攻防もない。グランド中心で、切り返しの妙、理に適った一点集中攻撃で観客を引き込んだのである。特に右足の自由が利かないTAKAは一度もロープを走ることはなかった。それでいて、ここぞのケブラーダ! それまで1回も飛び技がなかったからこそ、この1発は大きなインパクトだった。

 最後はカズのパワープラントで勝負がついたが、その直前のグーによる殴り合いは2人の会話に見えた。

 試合後、感心したのはTAKAが右膝の状態を言い訳にしなかったこと。彼は「すべてを出した上での完敗」と言い切ったのである。

「すべてを出しました。でもカズの方が上だった。まったく無名の団体から出て、まったく注目されない上に“あんなのレスラーじゃない”って言われていた2人が全日本プロレスでベルトを賭けてメインを張れるのが嬉しくて感傷的になっちゃって、試合前から涙が出そうでした。今日は前にヘビー級のシングルが6つもあったけど、ヘビー級の重みに負けたくなかった」とTAKA。

 18年間切磋琢磨してきたカズとTAKAの世界ジュニア戦には確かに他の試合にはない重みがあった。

投稿者 maikai : 13:53 | コメント (2)