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2009年08月29日

好漢・井上勝正の決断

 大日本プロレスは宮本裕向vsアブドーラ・小林を軸にしたデスマッチ世代闘争、大日本vs他団体の対抗戦が進行しているが、そんな中でひとりのレスラーが昨日の後楽園ホールで廃業した。突貫ファイトで人気を博した井上勝正である。

 彼が格闘家集団のREX JAPANにいた時代も、大日本に入団して近藤博之とのチーム若作りで売り出していた時期も私は知らない。週刊ゴングが休刊となり、様々な団体に足を運ぶ時間が出来た07年春以降になって、ようやく私は井上勝正というレスラーを認知するようになった。

 ガッチリした体型、常に真っ向からぶつかる泥臭いスタイルは、今の時代にあっては逆に新鮮に映った。アパッチの新木場大会でリキプロの和田城功とのシングルマッチは泥臭い2人の武骨な試合として印象に残っている。それを思い出の試合に挙げたのは、いかにも井上らしい。和田は和田で「もっとトップの方たちと試合をしているのに、自分との試合を挙げていただいたなんて…」と感激していた。

 井上の廃業理由は両膝の前後十字靭帯、外側内側側副靭帯損傷、両膝半月版損機能不全と4・6高石大会で異変を感じたという右目外傷性視神経症。右目の視野が欠けていることでリングを去ることを決意したというが、改めて聞いてみると「昨年10月に対戦相手の技を受け切れないことがあって、悩んでいました」とのこと。

 引退ではなく、廃業としたのは「現実は怪我によるドロップアウトなんですよ。だから引退ではないです。出来なくなったら去るしかない。廃業という言葉しかなかったんです」

 とにかく井上は実直な男。「1試合でも出来たなら廃業しなかった」と引退試合を拒み、この日のリング上での挨拶でも「リングは戦う場所なので、僕が発する言葉はありません」と、ファンへの感謝しか口にしなかった。10カウント後、マイクを通さず四方に向かって大声で「ありがとうございました!」と叫んでいたのが、いかにも井上らしかった。

「リングは戦う場所なので、僕がそこで何を言うことはないですけど、他の場所では元大日本プロレスのレスラーだったと胸を張って言えるようにどんな仕事でも一生懸命やっていきます。レスラーを廃業しても人生はこれからまだまだ。余生ではないですから。だから振り返ることもないし、振り返る暇もないですよ。全力で突っ走ってきて、これからもさらにスピードを上げて突っ走るんで、振り向いていたら危ないですからね。しっかり前を見て、生きていきます」と井上。今後は神奈川県横浜市鶴見区のスーパー銭湯おふろの国で働くという。

 プロレスラーの引き際は難しい。井上のように「もう満足出来るファイトができない」ときっぱり決断する人もいれば、どんなに怪我をしようともリングに上がり続けて、それがファンに支持される人もいる。

 どの選手にも悔いのない人生を送ってもらいたいし、リングを去った後も幸せであってほしい。自分自身と家族を大切にしてほしい。突き詰めれば、生きて、普通に生活できる体でリングを降りてほしいと願う。

 井上勝正選手、プロレスラー生活、お疲れさまでした。そして新たな人生での突貫ファイトを期待しています。

投稿者 maikai : 2009年08月29日 10:23

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