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2007年10月19日

勝彦の覚悟と心意気

 昨日の全日本プロレス創立35周年記念代々木大会はテンコ盛りだった。私はGAORAのテレビ解説をしていたが、全試合が終了してパッと時計を見たら10時半過ぎ。だが、そんな長さを感じることのない大会だった。実況の鍵野アナウンサーも「もう、こんな時間になっていたんですか!?」と驚いていた。

 メインは佐々木健介に川田利明が挑んだ三冠戦。ここに至るまでの「オファーがあったから出場する」というニュアンスの川田発言に引っかかりを感じていたが、いざ試合になれば、この2人ならではのゴツゴツしたいい試合だったと思う。「目指せ1勝!」の横断幕が張られていた時代の川田、全日本で1勝もできず0勝150敗8引き分けの記録を作ったジャパン・プロレス時代の健介を知っている人間としては、記念大会でその2人がメインを張ったというのは感慨深いものがある。失礼ながら、その当時は、この2人がとてもトップに立てる人材とは思っていなかったからだ。努力すれば何でも叶うというものではないが、この2人は努力と積み重ねの大切さを身を持って教えてくれた。

 さて、テンコ盛りだった昨日の大会で個人的に一番印象に残っているのは世界ジュニア王者の中島勝彦だ。勝彦は8日の開幕戦で右手舟状骨骨折の重傷を負ってしまった。巡業は欠場したものの、このシルバー・キングとのタイトルマッチには強行出場となった。

 午後4時半過ぎ、勝彦は黙々とミット打ちをやっていた。手が使えないからキックだけで勝負せざるを得ないのだ。練習が一段落ついた後に話しかけてみると「いろいろご迷惑、ご心配をかけて申し訳ありませんでした」と勝彦。よくも、こんな言葉が出てくるものだと感心した。

 怪我の状態はハッキリ言って最悪だった。骨がくっつくまでに1ヵ月は要するという。医者からは「後遺症が残ることも覚悟しておいてください」と言われながらの出陣だったのだ。

 だが、試合後にはブーイングが飛び交う状況になってしまった。シルバー・キングの攻撃に耐えに耐え、一発逆転の十字架固め。シルバー・キングの足がロープにかかったにもかかわらずボンバー斉藤レフェリーは3カウントを数えてしまった。その瞬間のブーイング…これがミス・ジャッジをしたボンバーに浴びせられたものだったら当然だったとしても、戦った当事者に浴びせられたものだったらやりきれない。勝彦はレスラー生命を賭けて戦っていたし、試合内容も悪くなかったからだ。

 その後の馳PWF会長の対応はさすがだった。すかさずミス・ジャッジだったとして再試合を命じたのである。再試合は両者リング内でダウンする両者カウントアウト…またまたブーイングだ。そしてドサクサに紛れて近藤が乱入してベルトを持ち去ってしまった。

 こうした事態に馳PWF会長は「日を改めて再戦」を宣言したが、客席から「今、やれ!」というような声が飛び交った。これにもやるせない思いにさせられた。どう考えても、このまま再々試合をしたとしても、いいファイトになるわけがない。シルバー・キングは客を煽るだけで実際には試合に対する集中力をすでになくしていたし、勝彦も限界に達していた。チケットを買っている人間にとっては「ここでやれよ!」と思うのもわかるが、やはり選手の体を考えてほしい。

 若い時に怪我をしつつも無理をして、それが持病になって苦しんでいるレスラーを何人も見てきた。19歳の将来がある勝彦にそうなってはほしくないのだ。もし、あそこで再々戦になっても勝彦はそれを受け入れて一生懸命試合をしただろう。だが、それによって彼が潰れてしまったら…。

 私はいつも思う。レスラーが常に大きなリスクを覚悟の上でリングに上がっているということを理解してほしいと。最近ではHI69が胸椎骨折という大怪我を負っている。そういう危険な職業なのだ。昨日の勝彦の試合に関しては、確かに後味の悪い結末だったとは思うが、リングに上がった勝彦の心意気を買ってあげてほしいと思う。

投稿者 maikai : 2007年10月19日 10:41

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